前回の記事にも書きましたが、私は翻訳学校の英訳のクラスに通い始めたのを皮切りに、セミナーや勉強会に積極的に参加して自分の訳文を第三者から評価してもらう機会を持つようにして来ました。
これまで参加したクラス・セミナー・勉強会についてはこちらに書いています。
中でも一番勉強になったのは翻訳学校でした。通信ではなく通学のクラスです。
どんな授業だったのかと言うと、
毎週授業の前にテキストを読んで予習し、課題を英訳して学校に送付。
そして先生は、授業でその英訳をみんなの前で添削して行きます。「これは〇〇さんの英訳です」とは言われませんが、少人数のクラスなので、誰が訳した文章なのかはなんとなくわかります。
ウンウン唸りながら訳した文章を、みんなの前で真っ赤に添削され、最初の頃は「もう帰りたい…」と悲しくなっていましたが、回を重ねる毎に赤字が少なくなり、時々「この訳はいいですねぇ!」と褒めてもらったりするようになると俄然楽しくなりました。
こうしてみんなの前に晒されると思うからこそ、毎週の課題は一生懸命訳しました。
そして何より、通学のいいところは、先生にリアルタイムで質問できるところ。
通信コースで添削してもらっても、なぜそのように修正されたのか理由がわかりにくいのですが、リアルの場合は、理解できるまで教えてもらえます。
また、クラスの他のメンバーの質問に対する先生の答えも聞くことができ、これも物凄く勉強になります。
通学講座では、テキストに書かれていない質疑応答や雑談の中に、学ぶべきことがたくさんあるのです。
インハウスの英訳者時代、私は常に自分の書く英文が良いのか悪いのか自信がなく、ただ日々の業務に謀殺される毎日。そして、英訳の仕事をそれほど難しいとは感じていませんでした。(あくまでも私の場合です。インハウスの英訳者さんの中には勉強を怠らず、常に真剣に訳文に向き合っている方々もたくさんいらっしゃいます。)
というのも、社内文書は「とりあえず通じればいい」的な英訳でしたし、仕様書やマニュアルについても、文法的にはそれほど難しい英文を書く必要もなかったからです。
ところが、フリーランスになると、専門分野を絞っても、とにかくありとあらゆる内容の文書を英訳しなくてはいけません。
私の専門分野は工業ですが、仕様書・マニュアルだけではなく、基準書やHP、最近ではプレスリリースの英訳も受けています。
そしてそんな中、一度でもクオリティの低い仕事をしてしまうと次はありません。
そういう状況の中で仕事をしていると、なんて難しい仕事なんだろう、勉強していかないとこの仕事は続けられないぞ、と焦り始め、勉強を続けていく必要性を実感するようになりました。
また、客観的に評価をしてもらうと言う意味では、ネイティブチェッカーの方にチェックをしてもらう、という方法もあります。
もちろん、ネイティブチェックを受けて自然な英文に修正してもらうことは重要です。
ただ、それと同時に、日本語を母語とする英訳者さんから英訳を学ぶこともとても大切だと思います。
私たちの仕事は、一から英文を書くわけではなく、まず原文ありきです。原文を読んだ人と訳文を読んだ人が同じ絵を描くことの出来る成果物を作らなければなりません。
ですから、英文ライティングのテクニックを学ぶと同時に、原文の日本語が伝えようとしている意味(行間も含めて)をどのように英訳すればいいのかを学ぶことが重要。それをわかりやすく教えてくれるのが日本語を母語とする先生なのです。
最後に、これから英訳の勉強をして行きたいと思っている方へのアドバイスとしてはたくさんありますが、敢えて以下の3点に絞りたいと思います。
- まずは自分の英語力、文法力の底上げをしてください。最低でもTOEIC900点は必要です。
翻訳学校の英訳クラスには選抜試験がある場合があります。理由は、ある程度の英語力、文法力がないと授業について行けないからです。試験に合格できない場合は、英訳初心者のクラスから始めつつ、文法の勉強をして英語力を上げてください。 - 通信コースではなく通学コースを選択しましょう。
最近ではオンラインの授業が増えているので、全世界どこからでも受講できます。 - セミナーや勉強会に参加する際は、できるだけ添削サービスが付いているコースにしましょう。
黙って先生の話を聞いているだけではダメです。ちゃんと自分の手を動かして英訳すること。
そして、英訳のコツを学びつつ実力が上がって来たなと感じ始めたら、翻訳会社のトライアルにチャレンジしてみてほしいです。
トライアルは正直言って難関です。
一見簡単な文章と思いきや、提出された訳文を見れば、訳者がどこまで調べて理解して訳しているのかが透けて見えます。
というのも、学校やセミナーで訳す原文と違って、実際の仕事で訳す原文は本当に厄介なものが多いので、とにかく色んな角度から調べ物をして理解した上で訳す、しかもそれを限られた時間でこなす必要があるのです。それができる人じゃないと、合格するのは非常に難しいと思います。
昨今では機械翻訳がよく使われるようになって来ましたが、原文の意味を的確に理解し、読者の負担にならない読みやすい英文が書けるのは、人間翻訳者の強みです。
現状、日本人の優秀な英訳者は不足しています。
もちろん私もまだまだその域には達していないので、これからも勉強あるのみです。
この一年は英文法をさらに強化しようと思い、先月から英文法のゼミに通い始めましたが、まだまだ知らないことが山のようにあることを知り、愕然としています。
でもそれを知れたことはラッキーですし、自分は伸びしろがあるなぁ、なんて思っています、というか、思うようにしています(笑)
技術英訳者Kazuki、まだまだがんばりますよ~!!!